質疑応答に「待機室」を作りました — 本番前に1対1で確かめる
質問者が自分でカメラとマイクを確かめる方式では、うまくいかないことに気づくのが本番中でした。オペレーターが先に1対1で確認できる待機室を追加しています。なぜ質問者同士を会話させない設計にしたのかも書きます。
文 / YKC(イベント配信エンジニア / SynQNow 開発者)
質疑応答に待機室を追加しました。質問者が発言する前に、オペレーターが1対1で映像と音声を確かめられる仕組みです。
これまでは、質問者が自分で確かめる方式でした。挙手ボタンを押し、画面の案内に従ってカメラとマイクを許可し、自分の映像が映っているかを見て発言する。うまくいっていないことに気づくのが、本番中になります。
この機能は、利用者からの要望を受けて作った最初のものです。使っている人から「こうしてほしい」と言われて作ったという意味で、これまでの機能とは出どころが違います。

セルフサービスでは、間に合わない
質問者は配信の視聴者です。配信のために用意された機材を使っているわけではなく、手元のPCやスマートフォンから参加します。
そこで起きることは、だいたい決まっています。カメラの許可を押していない。別のアプリがマイクを掴んでいる。音量がゼロになっている。イヤホンを挿していないので回り込む。 どれも本人が気づけば直せますが、気づくのは自分の声が届いていないと分かってからです。
司会者から見ると、こうなります。発言を許可した。画面には「発言中」と出ている。しかし声が聞こえない。 配信は進んでいて、視聴者はその沈黙を見ています。ここで原因を切り分ける時間はありません。
確認の場を、本番の外に作る必要がありました。

オペレーターが1対1で確かめます
待機室を有効にすると、質問者は挙手のあとすぐ発言には進まず、待機室に入ります。
待機室には専用の画面で入ったオペレーターがいます。オペレーターは質問者の映像と音声をその場で確認し、必要なら声をかけて直してもらいます。確認が済んでから、司会者が発言を許可します。待機室を使うイベントでは、発言の許可は必ず手動になります。
オペレーター側は、映像と音声を送るか、音声だけを送るかを選べます。両方あったほうが話は早いのですが、音声だけにする選択にも理由があります。
- オペレーターの側が映せる環境にないことがあります。運営の控室は、たいてい映して見せられる場所ではありません
- 顔を出して確認すると、質問者を緊張させてしまうことがあります。声だけのほうが、気楽に試してもらえます
ただし音声は必ず送ります。 声も出さないのであれば、待機室にいる意味がありません。
質問者同士は、会話させません
待機室に複数の質問者がいても、質問者同士は互いの声を聞けません。 オペレーターが相手を選び、常に1対1で話します。

これは意図してそうしています。待機室は控室ではありません。確認のための場所です。次に発言する人たちが雑談できる空間を作ると、そこで交わされた会話の扱いに困ります。
映像とレベルメーターは待機中の全員分を出します。見るのは全員、聞くのは1人です。誰の口が動いているかは映像とメーターで分かるので、声まで全員分を鳴らす必要はありません。
そして、この「1対1」は設計しただけでは成立しませんでした。
検証中に、質問者Aの声が質問者Bに届くことがありました。経路をたどると、原因は接続ではなく音の回り込みでした。オペレーターはスピーカーで質問者Aの声を聞きながら話します。その声がオペレーターのマイクに入り、そのままBへ送られていたのです。
対策は、マイナスワンの記事に書いた話とまったく同じでした。オペレーターのマイクで、エコーキャンセルとノイズ抑制、自動ゲイン調整をすべて有効にします。 配信の本線ではこれらを切りますが、待機室では逆です。ここで求められているのは音質ではなく、回り込ませないことだからです。
論理的に接続を分けても、音は空気を通って回り込みます。この一件は、それを思い出させるものでした。
この教訓は画面にも残してあります。待機中の全員の声をまとめて聞く操作はありますが、そこには「ヘッドホン使用時のみ」と書いてあります。スピーカーで全員を聞けば、また同じことが起きるからです。
使うかどうかは、イベントごとに決めます
待機室はON/OFFを切り替えられます。 イベントの質疑応答設定にあるチェックボックス1つです。

OFFにすると、これまでどおり質問者が自分で確認して発言します。人手が要らないので、待機室を使わない判断も十分にありえます。 社内の定例のように参加者が慣れている場や、質問が数件しかない場では、確認に人を1人置くほうが重く感じられるはずです。
ONにすると人手が要ります。待機室に入るオペレーターが必要です。その代わり、本番中に音が出ないという事態がほぼ無くなります。
判断の目安は、その配信で音が出なかったときに何が起きるかだと考えています。社外向けの説明会や、登壇者が初めて参加する場では、沈黙のコストが高くつきます。人を1人置く価値があるのはそういう場です。
ひとつだけ制約があります。質疑応答の設定は、配信を開始したあとは変更できません。 始まってから「やはり人を置こう」とはできないので、使うかどうかは配信前に決めておく必要があります。
まとめ
- 質問者が自分で確かめる方式では、うまくいっていないと分かるのが本番中でした。確認の場を本番の外に作りました
- 待機室では、オペレーターが1対1で映像と音声を確認します。オペレーター側は映像と音声、または音声のみを選べます
- 質問者同士は会話させません。 待機室は控室ではなく、確認のための場所だからです
- 1対1は接続を分けるだけでは成立せず、オペレーターのマイクで回り込み対策を有効にする必要がありました
- ON/OFFはイベントごとに選べます。 音が出なかったときのコストが高い配信でONにする、という判断になります。ただし配信開始後は変更できないので、決めるのは配信前です
質疑応答そのものの作り方は配信のマイナスワン(n-1)とはに、この画面を含む配信オペレーション画面の考え方は配信画面を作り直していますに書いています。
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この記事を書いた人
YKC
イベント配信エンジニア / SynQNow 開発者
イベント制作の現場に25年、映像配信に20年近く携わってきました。オンライン配信が当たり前になるより前から、拠点間中継やライブ配信の現場に立っています。
- イベント制作の現場に入り、以来25年にわたって本番運営に携わる
- 映像配信に軸足を移し、20年近く配信オペレーションと技術設計を担当
- オンライン配信が一般化する以前から、拠点間中継・遠隔中継の現場を手掛ける
- 株主総会をはじめとする、失敗が許されない配信の現場を数多く経験
- 現場で繰り返し直面した課題をそのまま設計に落とし、SynQNowを開発
- ライブ配信
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