本文へスキップ
SynQNow
現場ノウハウ6分で読めます

OctaQを初めて現場で使いました — プレイリストを足した理由

進行が読めない現場のために作った8 Deckの再生アプリを、初めて実際の現場で使いました。今回はむしろ逆で、歓談中のBGMを流し続けたい現場。前日に実装したプレイリストで、両方の現場に使えるようになった話を書きます。

文 / YKCイベント配信エンジニア / SynQNow 開発者

イベントBGM用に自作した8 Deckの再生アプリ OctaQ を、初めて実際の現場で使いました。

これまでの2本の記事では、どちらも「まだ本番で回した実績はありません」と書いてきました。ようやくその報告ができます。

結果から書きます。動作は安定していました。 操作のモタつきも、再生音声の不具合もありません。

そのうえで、書くことがあったのは別の部分でした。今回の現場は、このアプリが想定していた現場とは要求が逆だったという点です。

会場の放送設備の隣に、ミキサー、MacBook、MIDIコントローラー、ヘッドホンを並べた当日の卓まわり。MacBookの画面にOctaQが表示されている
当日の卓まわりです。左奥がミキサー、右手前がMIDIコントローラー、手前左は会場の放送設備です。

今回は「進行が読めない現場」ではありませんでした

OctaQは運動会のような現場を想定して作りました。競技が3分伸びる、順番が入れ替わる。進行が崩れるので、次に流すものを先に仕込んでおきたい。 8 Deckにしたのはそのためです。

今回入ったのは、200名ほどの地域の催しです。進行は事前に決まっていて、その通りに進みました。曲を差し替えたい、長さを詰めたい、という場面はほとんどありません。

代わりにあったのが、こういう要求でした。

歓談の間、複数のBGMをループで流しておきたい。

これは8 Deckでは解けません。歓談が20分で終わるのか40分続くのかは、その場の空気で決まります。何曲流すことになるのか、始まってみないと分かりません。

1曲ずつ仕込むやり方だと、ここで手が塞がります。曲が終わるたびに次を用意することになり、その間、次の出し物の準備ができません。

同じ「読めなさ」でも種類が違いました。8 Deckが解いたのは「次に何を流すか」が読めないこと。今回求められたのは「いつまで流すか」が読めないことへの備えです。

前日にプレイリストを作りました

現場に入る前日、プレイリスト機能を実装しました。ベータ版として手元でだけ動く状態です。

仕様はこうです。

  • Deckごとに個別のプレイリストを登録できます
  • 順番に再生するか、シャッフルで再生するかを選べます
  • リピートは全曲リピートのみです

間に合わせで入れた機能という位置づけでしたが、当日いちばん手を動かすことになったのがこれでした。

プレイリストは、曲の並びではなく場面の単位でした

実際に効いたのは、複数曲をまとめられることではありませんでした。プレイリストを場面ごとに分けて登録できたことです。

入場のとき、歓談のとき、退場のとき。それぞれに別のプレイリストを作り、別のDeckに置いておきます。

OctaQの画面。8つのDeckのうち2つにプレイリストが入り、全曲リピートが有効になっている。下部に選択中のDeckのプレイリストが曲順で並ぶ
プレイリストを入れたDeckと、1曲だけを置いたDeckが同じ画面に並びます。左のライブラリは場面ごとにフォルダを分けたものです。

「プレイリスト=曲の並び」ではなく「プレイリスト=その場面で流すもの一式」として使っていたことになります。Deckごとに持てる作りにしたのが、結果的に正解でした。アプリ全体で1つのプレイリストしか持てない作りだったら、この使い方はできていません。

そして、出し物の音源のほうは従来どおりです。乾杯、踊り。1曲だけを置いたDeckを、頭出ししておく。 プレイリストを使わないDeckと使うDeckが、同じ画面に並びます。

結果として、進行が崩れる現場にも、流し続けたい現場にも、同じアプリで対応できるようになりました。今回はその両方が1つのイベントの中にありました。

1曲リピートは載せませんでした

リピートは全曲リピートだけで、1曲リピートは実装していません。

理由は単純です。同じ曲を繰り返したいなら、その曲をDeckに直接置けばいいからです。Deckは8つあります。1曲だけのDeckをリピートさせるのと、1曲のプレイリストを作って1曲リピートにするのとでは、後者は手数が増えるだけです。

これはEQもSYNCもFXも載せなかったときと同じ判断です。機能を足す前に、既にある仕組みで済まないかを見ます。 済むのであれば載せません。ボタンが1つ増えるたびに、暗い会場で押し間違える余地が増えます。

動作については、書くことがありませんでした

冒頭に書いたとおりです。操作のモタつきはなく、再生音声の不具合もありませんでした。

音を出す道具としては、これが当たり前の状態です。ただ、自作したものを初めて本番の卓に並べるときは、当たり前が当たり前に起きるかどうかが分かりません。何も起きなかったことが、今回いちばん安心した点です。

一度の現場で確かめられたことには限りがあります。次から次へと出し物が変わる進行や、曲数の多い長時間のイベントでは、まだ何が出るか分かりません。

これから

プレイリスト機能は、いまのところベータ版にだけ入っています。 現在お渡ししているバージョンには入っていません。

一度現場を通したことで、残す価値がある機能だと判断しました。正式版としてのリリースを進めます。 時期が決まったら、あらためて書きます。

まとめ

  • OctaQを初めて実際の現場で使いました。 動作は安定していて、操作のモタつきも音の不具合もありませんでした
  • 今回の現場は、このアプリが想定していた「進行が読めない現場」ではありませんでした。求められたのは、歓談中にBGMを流し続けることです
  • 8 Deckが解いたのは「次に何を流すか」、プレイリストが解いたのは「いつまで流すか」です
  • 効いたのは曲をまとめられることではなく、場面ごとに分けて持てることでした。入場・歓談・退場をそれぞれ別のDeckに置けます
  • 1曲リピートは載せていません。 Deckが8つある以上、その曲をDeckに直接置けば済むからです
  • プレイリストを使うDeckと使わないDeckが同じ画面に並ぶので、進行が崩れる現場にも、流し続けたい現場にも、同じアプリで対応できます
  • プレイリストはベータ版のみの機能です。正式版のリリースを進めます

これまでのOctaQの記事は、8 Deckにした理由と載せなかった機能と、拍線を出して小節頭は出さないと決めた話にあります。

  • #BGM
  • #イベント音響
  • #PA
  • #音楽再生アプリ
  • #macOS
  • #OctaQ
  • #現場対応

この記事を書いた人

YKC

イベント配信エンジニア / SynQNow 開発者

イベント制作の現場に25年、映像配信に20年近く携わってきました。オンライン配信が当たり前になるより前から、拠点間中継やライブ配信の現場に立っています。

  • イベント制作の現場に入り、以来25年にわたって本番運営に携わる
  • 映像配信に軸足を移し、20年近く配信オペレーションと技術設計を担当
  • オンライン配信が一般化する以前から、拠点間中継・遠隔中継の現場を手掛ける
  • 株主総会をはじめとする、失敗が許されない配信の現場を数多く経験
  • 現場で繰り返し直面した課題をそのまま設計に落とし、SynQNowを開発
  • ライブ配信
  • 超低遅延配信
  • WebRTC
  • HLS
  • RTMP
  • SRT
  • 拠点間中継
  • 株主総会配信
  • IR・決算説明会配信
  • 社内配信
  • イベント音響・映像オペレーション

YKC のプロフィールを見る →

現場ノウハウ14分で読めます

OctaQ 1.1 — 拍線は出す、小節頭は出さないことにしました

イベントBGM用の8 Deck再生アプリOctaQを1.1に更新しました。HOT CUE、拍線の表示、客席に音を出さずに仕込める操作系、同一オーディオI/Fでの2系統出力。そして小節頭の自動判定を、測ったうえでやめた話を書きます。

  • #新機能
  • #BGM
  • #イベント音響
  • #PA
  • #音楽再生アプリ
  • #macOS
  • #OctaQ
現場ノウハウ8分で読めます

イベントBGMのために、8 Deckの再生アプリを自作した

進行が読めないイベントのBGMオペレーションは、2 Deckでは回りません。8 Deckにした理由、EQもSYNCも載せなかった判断、2系統出力の同期で詰まった点まで、macOS用アプリOctaQの開発記録をまとめます。

  • #BGM
  • #イベント音響
  • #PA
  • #音楽再生アプリ
  • #macOS
  • #OctaQ
現場ノウハウ8分で読めます

配信の音が小さいと言われる理由 — PAの音は、そのまま流せない

PA卓の音をそのまま配信に流すと「小さい」と言われます。原因はレベルではなくダイナミクスレンジ。ラウドネスで測る方法、音楽とプレゼンでの違い、プラグインで整える順番、PCが落ちても音を止めないDanteの構成まで書きます。

  • #音声
  • #ラウドネス
  • #PA
  • #イベント音響
  • #プラグイン
  • #Dante
  • #現場対応

← 記事一覧へ戻る