OctaQを初めて現場で使いました — プレイリストを足した理由
進行が読めない現場のために作った8 Deckの再生アプリを、初めて実際の現場で使いました。今回はむしろ逆で、歓談中のBGMを流し続けたい現場。前日に実装したプレイリストで、両方の現場に使えるようになった話を書きます。
文 / YKC(イベント配信エンジニア / SynQNow 開発者)
イベントBGM用に自作した8 Deckの再生アプリ OctaQ を、初めて実際の現場で使いました。
これまでの2本の記事では、どちらも「まだ本番で回した実績はありません」と書いてきました。ようやくその報告ができます。
結果から書きます。動作は安定していました。 操作のモタつきも、再生音声の不具合もありません。
そのうえで、書くことがあったのは別の部分でした。今回の現場は、このアプリが想定していた現場とは要求が逆だったという点です。

今回は「進行が読めない現場」ではありませんでした
OctaQは運動会のような現場を想定して作りました。競技が3分伸びる、順番が入れ替わる。進行が崩れるので、次に流すものを先に仕込んでおきたい。 8 Deckにしたのはそのためです。
今回入ったのは、200名ほどの地域の催しです。進行は事前に決まっていて、その通りに進みました。曲を差し替えたい、長さを詰めたい、という場面はほとんどありません。
代わりにあったのが、こういう要求でした。
歓談の間、複数のBGMをループで流しておきたい。
これは8 Deckでは解けません。歓談が20分で終わるのか40分続くのかは、その場の空気で決まります。何曲流すことになるのか、始まってみないと分かりません。
1曲ずつ仕込むやり方だと、ここで手が塞がります。曲が終わるたびに次を用意することになり、その間、次の出し物の準備ができません。
同じ「読めなさ」でも種類が違いました。8 Deckが解いたのは「次に何を流すか」が読めないこと。今回求められたのは「いつまで流すか」が読めないことへの備えです。
前日にプレイリストを作りました
現場に入る前日、プレイリスト機能を実装しました。ベータ版として手元でだけ動く状態です。
仕様はこうです。
- Deckごとに個別のプレイリストを登録できます
- 順番に再生するか、シャッフルで再生するかを選べます
- リピートは全曲リピートのみです
間に合わせで入れた機能という位置づけでしたが、当日いちばん手を動かすことになったのがこれでした。
プレイリストは、曲の並びではなく場面の単位でした
実際に効いたのは、複数曲をまとめられることではありませんでした。プレイリストを場面ごとに分けて登録できたことです。
入場のとき、歓談のとき、退場のとき。それぞれに別のプレイリストを作り、別のDeckに置いておきます。

「プレイリスト=曲の並び」ではなく「プレイリスト=その場面で流すもの一式」として使っていたことになります。Deckごとに持てる作りにしたのが、結果的に正解でした。アプリ全体で1つのプレイリストしか持てない作りだったら、この使い方はできていません。
そして、出し物の音源のほうは従来どおりです。乾杯、踊り。1曲だけを置いたDeckを、頭出ししておく。 プレイリストを使わないDeckと使うDeckが、同じ画面に並びます。
結果として、進行が崩れる現場にも、流し続けたい現場にも、同じアプリで対応できるようになりました。今回はその両方が1つのイベントの中にありました。
1曲リピートは載せませんでした
リピートは全曲リピートだけで、1曲リピートは実装していません。
理由は単純です。同じ曲を繰り返したいなら、その曲をDeckに直接置けばいいからです。Deckは8つあります。1曲だけのDeckをリピートさせるのと、1曲のプレイリストを作って1曲リピートにするのとでは、後者は手数が増えるだけです。
これはEQもSYNCもFXも載せなかったときと同じ判断です。機能を足す前に、既にある仕組みで済まないかを見ます。 済むのであれば載せません。ボタンが1つ増えるたびに、暗い会場で押し間違える余地が増えます。
動作については、書くことがありませんでした
冒頭に書いたとおりです。操作のモタつきはなく、再生音声の不具合もありませんでした。
音を出す道具としては、これが当たり前の状態です。ただ、自作したものを初めて本番の卓に並べるときは、当たり前が当たり前に起きるかどうかが分かりません。何も起きなかったことが、今回いちばん安心した点です。
一度の現場で確かめられたことには限りがあります。次から次へと出し物が変わる進行や、曲数の多い長時間のイベントでは、まだ何が出るか分かりません。
これから
プレイリスト機能は、いまのところベータ版にだけ入っています。 現在お渡ししているバージョンには入っていません。
一度現場を通したことで、残す価値がある機能だと判断しました。正式版としてのリリースを進めます。 時期が決まったら、あらためて書きます。
まとめ
- OctaQを初めて実際の現場で使いました。 動作は安定していて、操作のモタつきも音の不具合もありませんでした
- 今回の現場は、このアプリが想定していた「進行が読めない現場」ではありませんでした。求められたのは、歓談中にBGMを流し続けることです
- 8 Deckが解いたのは「次に何を流すか」、プレイリストが解いたのは「いつまで流すか」です
- 効いたのは曲をまとめられることではなく、場面ごとに分けて持てることでした。入場・歓談・退場をそれぞれ別のDeckに置けます
- 1曲リピートは載せていません。 Deckが8つある以上、その曲をDeckに直接置けば済むからです
- プレイリストを使うDeckと使わないDeckが同じ画面に並ぶので、進行が崩れる現場にも、流し続けたい現場にも、同じアプリで対応できます
- プレイリストはベータ版のみの機能です。正式版のリリースを進めます
これまでのOctaQの記事は、8 Deckにした理由と載せなかった機能と、拍線を出して小節頭は出さないと決めた話にあります。
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この記事を書いた人
YKC
イベント配信エンジニア / SynQNow 開発者
イベント制作の現場に25年、映像配信に20年近く携わってきました。オンライン配信が当たり前になるより前から、拠点間中継やライブ配信の現場に立っています。
- イベント制作の現場に入り、以来25年にわたって本番運営に携わる
- 映像配信に軸足を移し、20年近く配信オペレーションと技術設計を担当
- オンライン配信が一般化する以前から、拠点間中継・遠隔中継の現場を手掛ける
- 株主総会をはじめとする、失敗が許されない配信の現場を数多く経験
- 現場で繰り返し直面した課題をそのまま設計に落とし、SynQNowを開発
- ライブ配信
- 超低遅延配信
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